イルグルムでは、現在、中期経営計画「MXP(マーケティングトランスフォーメーションプラットフォーム)戦略」を掲げ、マーケティングプラットフォームの拡大を進めています。
その一環として、2020年末に株式会社スプー(Spoo! inc.)が、イルグルムの連結子会社として新たに参画しました。

2000年の創業以来、数多くのメディアの企画・制作を手掛けてきたスプーが、なぜデジタルマーケティングを扱うイルグルムと手を組むことになったのか?
その背景を、スプーの経営陣であるお二人に伺いました。

川崎:時は遡り、私のキャリアは紙雑誌の編集者から始まりました。ちょうどその頃は日本でもインターネットの商用利用が始まろうとしていたタイミングでした。
それまでの「パソコン通信」とは仕組みも違いましたが、何よりも国境を超えて繋がる広がりと、そこにいる人達のボランタリーでボトムアップな行動規範や文化に触れて、非常にエキサイティングな要素を感じたのです。

すぐに夢中になっていった私でしたが、当時インターネットに関わる情報といえば技術書が中心で、そこにあるフロンティアのわくわくするような「面白さ」が中々伝わらない状況にもどかしさを覚えていました。
この面白さをなんとかして多くの人達に知ってほしいという一心で、インターネットのカルチャーを詰め込んだ「ネット・トラヴェラーズ’95」「オープンソースワールド」を執筆しました。

 

ネットトラベラーズ95(@amazonJPより)
1994年発行、知る人ぞ知るインターネット黎明期にヒットしたサブカル書籍


オープンソースワールド (@amazonJPより)
1999年発行、今でこそ一般的になったオープンソースの本質を徹底解説した著作

 
川崎:技術書ではなくカルチャーそのものを取り扱った書籍は珍しかったこともあり、たくさんの人に読んでもらえました。当時は検索エンジンなるものは存在しなかったので、WEBサイトの紹介と合わせて、まるでネットサーフィンをしているような感覚になってもらえるように執筆しました。

その結果多くの反響を得て、インターネットのイメージが、難しいものから「身近なもの、面白いもの」へ変わっていくことを実感することができました。
この経験が、現在のスプーのミッションである「わかり合える世界を作る」の礎になりました。

川崎:スプー社創業後はオウンドメディアの前身のようなものや、WEBコンテンツの企画制作、街のフリーペーパーマガジンなどの紙媒体なども任せていただいておりました。案件も多くいただき社員ひとりひとりがプロのライターとして活躍していたものの、各個人がそれぞれ独立して動いているような状態で、組織として動けているような感覚はありませんでした。そんな最中に現取締役である林と出会いました。

林:私はニュースサイト「CNET Japan」の立ち上げに従事しておりましたが、実は川崎さんのことは自身のキャリア最初期から知っていました。「オープンソースワールド」は私がこの世界に入ったきっかけの一つでもあります。

当時はインターネット関連の企業がそんなに多くなかったので、川崎さんとは色々な集まりでニアミスしていたんですが、ひょんなことから「会社としての仕組みを整えていきたい、第二創業期として力を貸してくれないか」と声をかけられ、参画することを決めました。
改めて話を聞き、 創業当初から変わらない、川崎の「新しいもの、面白いものを世の中に伝えていきたい」というスタンスに強く共感しました。

 
川崎:たしかに、「面白がる」は常に言っている気がします。どんな企業様、サービスにも、そこにしかないストーリーがあって、知るたびにワクワクしますね。

林:スプーが大切にしている「ストーリーを紡ぎだす」ですね。
私は参画後、スプーをプロフェッショナルな個人の集まりから、思いを一致させ、より力を発揮できる「企業体」へと進化させるために、社内制度の制定やサービスを企画していきました。この川崎の思いもメンバーにしっかりと受け継がれています。

川崎:スプーは10人に満たない企業ですので、企業様の課題を解決するためにはリソースや知見の限界を感じていました。
協業できる企業を探して多くの企業様とお話させていただいた中で、最終的にイルグルム社と手を組むことになった理由は主に2つあります。

1つ目は代表である岩田さんとの会話で生まれた信頼感でした。
既存の枠組みの中で経歴や資本力などでビジネスを展開してきたのではなく、ゼロベースから自分たちで考えいいと思ったアイディアを、自分たちの手で自分たちのやり方で具現化する。
そういう、いわばDIYマインド、ボトムアップで新しい世界を切り拓く姿勢を、岩田さんと何度かの会話の中で理解することができましたし、だからこそ、ゼロから起業して20年間成長してこられたのだと納得しました。

2つ目は事業のシナジー性の高さです。
イルグルム社はデジタルマーケティングに長らく取り組まれており、スプーのビジョンであった「コミュニケーション課題を解決する」という点では、私達が培った編集/クリエイティブ領域と、デジタルマーケティングの領域はとてもシナジーがあるものでした。

新しいサービスを具現化するには、単に冴えたアイディアが1つあればいいだけではなく、様々なリソースを多方面から探し出してきて、既成概念に囚われず組み合わせて、粘り強く構築して育てていかないといけないのだと思います。岩田さんと話す中で、そういう実践が共に出来る方だとの印象も強かったですね。

林:環境が変化するので当然といえばそうなのですが、正直なところ、それでも本当にうまくやっていけるだろうかといった不安は、簡単に拭いきれるものではありませんでした。しかし充実したPMIの体制によってその不安は一蹴されました。
PMIでは代表の岩田さんを始め、取締役1名、PMIの専任担当者2名との経営会議を毎週実施しています。さらに必要に応じて、各部門の皆さまにも随時ご支援いただいている状況です。

川崎:岩田さんが直接関わられていることもあり、意思決定のスピードやご指摘の鋭さにとても助けていただいています。事業スケールの視野がどんどん広がっていくように感じます。
またPMI専任担当者がいらっしゃることで、私達では動ききれない部分のフォローであったり、現場の実体験を元にした細かな改善点等のアドバイスもいただけたりと、ここまでご支援いただけるのかと驚きました。

 

 
林:さらに策定した経営方針では、スプーがこれまで培ってきたコンセプトやスキルを「他社にはない圧倒的な強み」と位置づけ、今の事業を軸に両企業のシナジーを生む方針となっています。
岩田さんにもスプーの持つ独自性やビジョンを尊重していただき、今までの姿が大きく変わって混乱を生むような事も起きませんでした。

林:2021年4月には、イルグルムの製品ポリシーとこれからのマーケティングテクノロジーの進化について、特別鼎談の企画・構成をスプーで担当しました。
ジャーナリストの佐々木俊尚さんをゲストにお招きして、世界的に大きく変化する個人情報保護の背景を紐解き、よりよい社会のためにイルグルムが今後どのように進むべきかをストーリーに落とし込むお手伝いをしました。

特別鼎談 マーケティングテクノロジーの近未来
Talk Session- Cookie規制を超えて、すべてのステークホルダーに利益と安全を届けるために

 
川崎:2021年11月には、イルグルムとの共同企画で「事例侍」をリリースしました。「事例侍」は、BtoB企業が自社のホームページ等に掲載する導入事例・活用事例・成功事例等の事例記事の取材・執筆を代行するコンテンツ制作サービスです。
事例はその企業やプロダクトにしか存在しない、唯一無二のストーリーです。オリジナリティがあり間違いなく面白いストーリーなのに、世の中にあまり伝わっていないのは勿体ない、との思いからサービス化を実現しました。

イルグルム社内では新サービスの共有会も実施し、イルグルム経由でお問い合わせを頂くこともあり、早速シナジー効果を感じています。
これからも「分かりあえる世界」をつくっていくために、イルグルムと共に成長していきます。

グループ合同勉強会の様子

導入事例コンテンツ取材&執筆サービス「事例侍」
事例コンテンツの制作には、企画、ストーリー設計、インタビュー、撮影、執筆、関係者による原稿チェック、校正・校閲など、製品紹介コンテンツとは別種の手間やノウハウが必要になります。こうした業務を内製するのは負荷が高く、事例コンテンツが掲載できない、記事を更新できないという声がありました。スプーの「事例侍」は、事実とドラマを感じさせるストーリーの両面から訴求力のある品質の高いコンテンツを、ワンストップで提供いたします。

お二人からお話を伺って、「面白いもの」「ワクワクするもの」をより多くの人に伝えていきたいという思いが根底にあることを教えていただきました。その圧倒的な思いが企業や個人の秘められた魅力を見つけ、そこにしかない唯一無二の価値あるストーリーが紡ぎだされているのだと感じました。

モノからコトへ、さらにはイミ消費へと時代が移る中、私たちイルグルムも、デジタルマーケティングにはクリエイティブの力が不可欠と考えています。そして、スプー社の掲げる「分かり合える世界」は、売り手と買い手の幸せをつくることをビジョンとする私たちにとっても、デジタルマーケティングを通じて共に実現したい世界観です。

今回の「事例侍」のリリースを第一弾として、クリエイティブに豊富な知見を持つスプー社の仲間とより一層のシナジーを生み出し、広範な社会ニーズに応える総合マーケティングDX企業としての価値創出をさらに加速させてまいります。