こんにちは、イルグルムのわです。

今回は、アドエビスのデータ分析を通して製品の新しい未来を考える「研究開発部」のリーダーにインタビューしました。
研究開発部立ち上げの背景から現在の研究テーマ、今後の目標に至るまで、たっぷりと語っていただきました。

――これまでのキャリアを教えてください。

大学院卒業後の2008年にイルグルムに入社して、最初は受託開発を行う部門でECサイトのシステム構築や企画提案に携わりました。大学院の研究でプログラムを書いていたこともあり、入社後数ヶ月で新卒社員の師匠についたり、入社4年目からは部長として事業部をけん引する立場になるなど、早いうちからマネジメントにも関わることが多かったように思います。その後、アドエビスの開発などを経て、現在は研究開発部門の責任者として新しいテーマに取り組んでいるところです。

――研究開発部はどんな部署ですか?

アドエビスの開発ロードマップに合わせたデータの分析結果を企画や開発チームへフィードバックしたり、半年から一年先に使える機能をテーマにした研究を行っています。
マーケティング分野の調査も実施していて、最近では国内の個人情報保護法をはじめとするWeb上のユーザープライバシーに関する法改正の流れをキャッチアップし、データを正しく使うための環境整備を進めていました。その第一弾として、先日アドエビスのパーソナルデータに対する姿勢と考え方をまとめた「プライバシーステートメント」を作成し、公開しています。
今は、次のフェーズとして開発チームと連携を取りながら、プライバシーステートメントに沿って現状のサービスの精査進めつつ、新たな研究にも取り組んでいるところです。

――最近の研究内容について教えてください。

最近は、二つのテーマに取り組んでいます。
一つは、マーケティングファネルに沿ったデータの可視化と評価に関する研究です。データ分析に関する専門的な知識がなくても、データから気づきや示唆を得られるような機能を検討しています。例えば、「どのタイミングでどの施策が有効なのか」を分かりやすく表示したり、「どの施策とどの施策の組み合わせが効果的なのか」を分かりやすく知らせるといった感じです。アドエビスのユーザーの皆さんに気づきを提供することで、仮説立てや検証をしやすくするためのサポートをしていけたらと考えています。
もう一つのテーマは、業界の平均値を可視化するというものです。自社が平均と比べてどんな状態なのかを把握できるようにすることで、広告の投資判断の指標にできないかと考えています。

――アドエビスに蓄積されたデータを分析して、製品開発につなげる研究をしているんですね。研究にはどのような技術が使われているのでしょうか。

機械学習や最適化シミュレーションを使用します。これまではシンプルな機械学習や統計処理が多かったのですが、今は音声処理や自然言語処理などで使うような時系列データに対応できる機械学習の手法をインターネットの広告評価に適応しようとチャレンジしているところです。
データの多くは時系列のデータなので、データを最大限活用するには、前後の文脈を考慮した上で考える必要があります。それは、音声でも、自然言語でも、広告の評価においても一緒なので、時系列処理はとても重要だと考えています。

――研究テーマに取り組む上で心がけていることはありますか?

あまり複雑になりすぎないように気をつけています。複雑すぎると、実際のサービスとしては使い勝手が悪く、再現しにくいからです。
そしてもう一つは、ドメイン知識との整合性です。アドエビスで言えば、広告やマーケティングに関する知識になりますね。データを分析していると、どうしても分析テクニックなどの局所的な部分に集中してしまうことがあるので、「お客様にどんな価値を提供できるのか」を常に意識するようにしています。また、「リリース時に、お客様が求める形に仕上げることができるのか」とういう点にも気をつけていて、チーム内でバランスを取りんながら進めています。

――現在のチーム体制とそれぞれの役割についてもお聞かせください。

研究開発部には、私を含めて三名が所属していて、マーケティングファネルに沿ったデータの可視化については、二名のメンバーが主体となって進めてくれています。社歴が長く、ドメイン知識が豊富なメンバーが企画とプロジェクトの管理を行い、台湾で自然言語処理に関する研究をしていたメンバーがデータ分析を担当。ドメイン知識と分析技術両方のバランスを取りながら進めています。
私は、全体のレビューをしつつ、もう一つのテーマである業界の平均値を可視化するためのデータ分析を行っています。

――一年先の未来を見据えた研究の面白さや難しさってどんなところですか?

今はデジタルマーケティングの環境が大きく変わっているタイミングです。法規制に加え、プラットフォーマー側にも変化があるので、そういった変化に対してしっかり情報を収集しながら予測してテーマを設定していくのは難しくもあり、面白くもあります。研究していたものが使い物にならなかったり、もしかしたらこない未来を想定している可能性もあるので、並行してサブテーマも設定するようにしています。
研究テーマに関しては、常に未来に先駆けた情報収集や勉強を心がけ、変化を考慮して調整しています。対象が幅広く、また、答えがないものなので正直難しいですが、ドメイン知識をフル活用して取り組んでいます。業界知識や経験を活かすことで、外れそうな未来は後回しにして、おそらく来るであろう未来を予測できると考えています。そういう意味では、営業や企画の業務とも本質的には一緒かなと思います。
今は、データを利活用するための条件が変わっていく過渡期なので、ベースとなる技術を勉強したり、未来に先駆けて準備しておくことが特に重要だと感じています。

――最後に、今後の目標をお聞かせください。

ここ最近は、パーソナルデータに関する規制によって実現できなくなることの代替案を考えることが多かったのですが、できなかったことをできるようにしていく方法を考えるのも楽しいので、今後はそちらも頑張りたいですね。イルグルムには、たくさんのデータがあるので、しっかり分析して世の中に価値を提供していきたいです。

データとテクノロジーを駆使して世の中に価値を提供していきたいと語るその言葉は、イルグルムのビジョンそのものだと感じました。現在行っている研究の成果がマーケターとその先にいる生活者に幸せを届ける日が楽しみです!