こんにちは、イルグルムのわです。

イルグルムの自社製品「アドエビス」は、2004年の誕生からこれまで、マーケティング活動を行う企業様をサポートするためのツールとして1万件以上の導入をいただいています。
膨大なマーケティングデータの処理を行う製品の開発現場では、専門分野別にチームが設けられ、それぞれが日々、新機能の追加や保守などのアップデートを行っています。

そんな多くのメンバーが携わるアドエビス。新しく入社したエンジニアはどうやって業務知識を得ているのでしょうか?また、頻繁にアップデートされる製品の情報を、現場のエンジニアたちはどうやって共有しているのでしょうか?

今回は、新卒から中途まで、アドエビスに関わるすべてのエンジニアをサポートする横断チーム「教育委員会」の活動について、運営メンバーにお話を伺いました。

戸田(右):2017年中途入社。PMとして、アドエビスのインフラからアプリケーションまで多岐にわたるプロジェクトを遂行し、機能追加や安定稼働に貢献。現在は開発推進課の課長として、開発本部全体の効率化、改善にチャレンジしている。
加藤(中央):2017年新卒入社。フロントエンジニアとして、お客様の声をもとにアドエビスやアドレポの管理画面のUIUX改善に奮闘中。昨年より新卒研修のプログラム考案や運営にも関わっている。
佐味谷(左):2017年新卒入社。インフラエンジニアとして、アドエビスのインフラ業務全般に携わる。直近では、サーバ機器やネットワーク機器のリプレイス案件に取り組んでいる。

――教育委員会について教えてください。

戸田:アドエビスの開発現場では、システムの範囲が広いことにより製品情報の共有が大変で、特に新しく開発に参加するメンバーへのシステム理解に課題を感じていました。
新卒メンバーはもちろん、中途メンバーも簡単に製品の知識をつけていち早く業務で力を発揮してもらえるような仕組みを作りたいと、2016年に開発チームのミドルマネジメント層数名で立ち上げたのが始まりです。
その名のとおり「教育」を目的として、イルグルムエンジニアの「知識の標準化」と「知識のベースアップ」に力を入れて、資料の整備や勉強会の企画、運営を行っています。

 
――委員会はどのような体制ですか?

戸田:開発の各チームからそれぞれ1名ずつ選出し、任期は2年です。週一回30分間、委員会を開催して、教育方針や次の企画について話し合いを行っています。
私は主に若手メンバーの教育係も兼ねた監督役として、会議のファシリテートや企画内容の確認などを担当しています。

加藤:私たち若手は企画のほかに、研修や勉強会の実際の運用を行っています。私は主に新卒向けの研修の取りまとめを担当しています。

佐味谷:私は主にアドエビスの開発に関わる資料の取りまとめを担当しています。

――具体的な取り組みについて教えてください。

戸田:一番力を入れて取り組んでいるのは「知識の標準化」です。イルグルムには中途入社メンバーも多く在籍していますが、アドテク業界以外からの転職も多いうえ、システムの範囲も広く、製品について理解していただくまでに時間がかかります。
そこで、ソースコードを読む前の基礎知識として、アドエビスとはから始まり、開発の仕組み、どういうシステム構造になっているかなどのアーキテクチャについて基礎資料としてまとめています。
各単元で10~20ページ。全部で10種類くらいあります。アドエビスの教科書みたいなものですね。(笑)
中途で入社されたエンジニアには、まずこの資料を使った講義を受けていただくことで、基礎知識を持った状態で業務に入っていただくことができます。

 
――次々とアップデートされる情報をどのように管理・共有しているのですか?

佐味谷:基本的には、アドエビス本体の仕様変更や新機能がリリースされたタイミングで資料を追加していますが、当然私たちのリソースだけでは管理できません。
教育委員会では資料化する内容を決め、勉強もかねて若手エンジニアを中心に資料のアップデートを依頼しています。
さらには、アップデートだけではなく、新しく入社された中途社員の方への講義も担当してもらっています。

――中途社員向けの講義はちょっと緊張しそうですね。(笑)

佐味谷:たしかにそうですね。(笑)
ただ、学んだことをアウトプットすることで、若手エンジニア自身の理解を深めてもらうねらいもあります。
アドエビスはシステム範囲が広く、内容が細かすぎるとよくわからなくなってしまいます。短い時間でまずは概要を理解していただくことと、あとから見てもわかる資料内容にしておくことのバランスも重要です。講義後にはアンケートも実施し、講師へのフィードバックや資料への反映も行うことで、若手エンジニアにも中途入社の方にも実のある時間になるよう工夫しています。

加藤:これまでは誰かがメンターになって連携していたのですが、毎回違うメンバーが教えるため、人によって教える水準も得られる知識もバラバラなところが課題でした。講義資料を統一したことで、知識の標準化が促進されていると感じています。

佐味谷:また、半期に1回は棚卸しして、全体的にアップデートするようにしています。アップデートは委員会以外のメンバーに依頼しています。教育委員会の活動範囲を管理にしぼり、ほかのメンバーにも協力してもらうことで、限られた時間でも組織全体に必要なことを確実に実施できていると考えています。

――新卒向けにはどのような教育カリキュラムを用意しているのですか?

加藤:新卒向けには4月の入社後に3ヶ月の研修を実施しています。毎年人数や傾向にあわせて教育委員会で研修方針を決めています。
前半はオンラインでエンジニアとしての基礎と、簡単なデータベースの仕組みを使ってシステムをつくる研修。
後半はチームで力をあわせてひとつのシステムをつくる研修を行っています。これは、正式な配属前に、進め方や共有方法などチームワークにおいて大事なことを知ってもらう機会になればと考えているためです。
基礎資料も活用しています。これからエンジニアとして携わる製品の基礎知識をあらかじめインプットできるので、新卒メンバーも安心して配属されたチームで業務に入れると考えています。

 
――密度の濃い3ヶ月ですね。

加藤:新卒研修の集大成としては発表会を用意しています。全社向けとエンジニア向けがあり、エンジニア向けの発表会では、先輩エンジニアからどういうふうに考えたのかなど設計や思想に関する質問が飛び交うんです。エンジニアが日頃どんなことに注意して開発を行っているのか、先輩の視点についても知ることがきる実践的な会です。

新卒研修発表会のようす

――新卒研修で気を付けていることはありますか?

加藤:一つ一つ納得してステップアップしてもらえるよう、何のためにやるのか、なぜこうするのかをちゃんと説明するようにしています。
あとは、やはり、仕事はみんなと協力してやることが重要だと覚えてもらうことですね。

――今後の目標を教えてください。

加藤:今後はセキュリティの知識など、製品だけではなく、デジタルマーケティング業界全体の座学的な内容にまで講義内容を広げたいです。業界の動きを知ることで、製品や開発方針の理解のベースになればと考えています。
また、新卒には1人につき1人の師匠がついていますが、師匠たちとも密に連携しながら教育体制を整えていきたいです。
現在も定例で弟子の進捗や抱えている課題を共有する師匠会議を行っているのですが、師匠と弟子、チーム全体の状況を教育委員会として把握し、スムーズに前進していけるようなサポートができる存在になりたいと考えています。

戸田:加藤さんの世代は、入社した際に実際に新卒研修を受けているメンバーでもあります。これからも、研修を受けた側だからこそわかるポイントを反映していってもらえるとうれしいですね。

――ほかに知識の標準化のために行っている取り組みはありますか?

戸田:知識の標準化の一環として、アドエビスで活躍するすべてのエンジニアを可視化する「エンジニアスキルマップ」があります。
基礎資料よりもさらに詳しい仕様や開発者の意見を聞きたいときに、社歴が浅い人でも誰がどこに精通しているのかすぐに確認することができます。
アドエビス開発体制全体を俯瞰できるので、強みと弱みを把握して組織作りの参考にしたり、チームを横断したプロジェクトを組むときにも役立っています。

 
――いい取り組みですね。お互いの専門分野がわかると、チームで製品を作っていることを意識でき、自然とリスペクトしあえる環境になるように思います。

戸田:ほかにも、アドエビスは24時間365日安定したシステムを提供する必要がありますが、なにか問題が発生した場合にも、知識の標準化があることで開発を担当したエンジニアだけではなく誰もが初動対応を行える組織体になっています。
もしこの仕組みがなければ、開発を担当したエンジニアがずっと現場に張り付く必要がありますからね。担当する機能は一つではないし、これからも増え続けていく。さらに、問題が1日で解消しない場合もあるし、重なって発生する可能性を考えると限界は見えています。そのための知識の標準化でもあるんです。

イルグルムエンジニアのための教育委員会の取り組み。前半では委員会の目的と知識の標準化についてお話いただきました。
後半は、週1回のハイペースで実施している社内勉強会と、今後の活動について詳しくお伺いします!

知識の循環で開発現場をベースアップ。イルグルムのエンジニアをサポートする「教育委員会」(後半)